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コラムcolumn

年金2000万円問題を解説します

澤田朗のコラム

最近は、「年金2000万円問題」が話題となって世間をにぎわせています。
多くの人から批判を受けているこの発言ですが、その意味や内容については様々な誤解をしている人も多いため、批判の中には的外れなものも少なくありません。
この発言の意味や、本来意図していた内容について解説していきます。

●どんな問題なのか?

そもそも、この年金2000年問題というのは、何が問題となっているのでしょうか?
これがなぜ話題となっているのか、またどのような批判を受けているのか、その詳しい内容とともに紹介していきます。

そもそもこの話題が生じたのは、金融審議会の「市場ワーキング・グループ報告書」が発端となっています。
この報告書の中にあった、「基本的な視点及び考え方」という項目に、この問題の原因となることが書かれていました。

その内容というのは、夫婦のみの世帯で夫65歳以上、妻60歳以上で無職の場合、毎月平均して約5万円不足することとなるので、その後の人生を20年から30年と仮定した場合は、単純計算で1300万円~2000万円不足することになる、というものです。

これは、年金だけで生活することを想定したものですが、夫が95歳、妻が90歳まで生活すると想定した場合、最大で2000万円が不足するだろう、という計算がなりたつ、ということでした。

この部分に野党が食いついたことで、今回の話題へとつながっていきます。
野党は、この2000万円不足するということは、それだけ貯金しなければ暮らしていけないなら、年金の意味は?と騒ぎ立てていったのです。

しかし、実はこの資料をよく見ると、この後にあくまでもこの金額は平均の不足額として計算したものなので、実際にどのくらい不足することになるのかは各世帯の収支状況、およびライフスタイルで大きく異なるということが書かれています。

また、不足しないことも当然あり得ますが、以前よりも平均寿命が延びている現在では、どうしても今までより多くのお金が必要となるので、それに応じて資産寿命も延ばしていく必要があるでしょう、ということも書かれています。

つまり、必ずしも2000万円不足するなどという話ではなく、またそれだけ貯金しておけということは一言も書かれていません。
あくまでも平均から計算した場合の不足額であり、不足しないことも考えられるが備えは必要、とだけ書かれているのです。

それに、毎月5万円不足するというのなら、貯金がない場合はそれ相応に質素な生活を送るなど、個々に調整するものです。
支出を示したグラフでも、食費が6.4万円、交通・通信費が2.7万円となっていますが、それこそ過程によってかなり異なっているでしょう。

こうした点を無視して、あたかも2000万円貯金していなければその分借金でもしなくてはいけないかのように騒ぎ立てたのが、今回の2000万円問題に発展したのです。
そもそも年金というのは、あくまでも保険という意味合いであり、それだけで平均的な生活を送れるのなら貯金や定年後の再雇用などは一切不要となるでしょう。

実際、これはあくまでも本題に入る前にこういった仮定ができる、というだけのものだったので、まさかこれほど大きな波紋が起こるとは思ってもみなかったでしょう。
このせいで、本題については忘れ去られ、麻生財務大臣も「表現が不適切だった」とコメントしています。

●本来の狙いは?

それでは、この問題となった報告書における本来の狙いとは、いったい何だったのでしょうか?
それは、老後に向けた資産形成をしていこうという内容でした。

老後の生活を考えて、公的年金だけではなくそれ以外の資産で賄わなくてはいけない収入がどのくらいになるか、という点を考えてみよう、ということであり、そのためにiDeCoやNISAを活用していこう、というのが本来の狙いだったのです。

iDeCoは、個人型確定拠出年金のことで、最近利用者が増加している金融商品です。
私的年金制度ともいわれ、自分で設定した掛金を積み立てていき、それをどのように運用するかも自分で選ぶことができます。
そして、60歳以降に老齢給付金として掛金と利益を受け取ることができる、というものです。

この特徴は、掛金として支払った分が所得控除となり、さらに運用益も再投資する場合は非課税となるという点です。
そのため、節税の面でも注目されています。

また、受け取る際には年金として分割して受け取るか、一時金として一括で受け取るかを選ぶことができるのですが、その際も年金の場合は公的年金等控除、一時金の場合は退職所得控除が適用されます。

老後の備えとして、現在注目を集めているのがiDeCoです。
一方、それ以前から話題となっているNISAにも、老後の備えがしやすいつみたてNISA制度が増えたため、これの利用者を増やすことも目的でした。

つみたてNISAは、通常のNISAと同様の少額投資非課税制度の一種なのですが、投資金額は年間40万円を上限としているものの、最長で20年間積み立てて投資することができ、そこで生じた利益は非課税となる、というものです。

その内容から、若年層向けの商品ではと思われがちなのですが、この仕組みは50歳以降で投資未経験の方にも向いています。
その理由として、長期投資の利益が出るのが老後と合致するからです。

50歳以降の方は、十分にお金を貯めて資産形成ができている人も少なくはありません。
また、定年退職を迎える60歳になると、退職金として大きな金額を受け取ることになるでしょう。
しかし、これらを一気に投資へと使う、というのはあまりお勧めできません。

いきなり株に大金を投資した場合、買いのタイミングを間違えてしまうと大きな損失を被る可能性は高くなります。
しかし、どのタイミングならいいのか、という見極めも難しいでしょう。

積み立てNISAの場合は、年間で投資できる金額に上限があるので、必然的に分散投資ができるようになります。
そうなると、高値で買ってしまうリスクは減らすことができるでしょう。

また、つみたてNISAの投資対象は投資信託なので、じっくりと資産を形成するのに向いているのです。
得られた利益も非課税となるので、利益を安心して受け取ることができます。

本来はこのような資産運用を紹介していくはずが、野党の早とちりによって台無しとなったといえるでしょう。
もう一度、この報告書の内容について、よく考えてみましょう。

●まとめ

今回話題となった年金2000万円問題は、色々な誤解が生じたことで国民の不安をあおることになり、批判される結果となってしまいました。
年金というのは、本来十分に生活するためのお金というわけではなく、あくまでも贅沢をしなければ生活できる保険でしかありません。
その中で、今回の問題は2000万円が無いと生きていけないという誤解を与える結果となってしまいました。
将来的に余裕のある生活をしたいのであれば、年金だけに頼るのではなく資産運用をしていくことが大切になります。
一度、老後の生活を考えて資産運用をすることも検討してみてはいかがでしょうか。

2019/07/18